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杜仲について

杜仲とは?

杜仲(トチュウ)とは、杜仲目 杜仲科 杜仲属 杜仲の高木(落葉樹)です。
原産地は中国、昔から樹皮が漢方薬として使われ、そしてこの杜仲の葉は「杜仲茶」として楽しまれてきました。
妊婦さんや女性の薬として。血圧を下げる効果や、近年はダイエッド茶として知られています。

木は放任栽培では20m以上にもなる高木で、発見された化石などから、古代から昔から姿を変えていない植物だと言われています。
また、分類も「杜仲目 杜仲科 杜仲属 杜仲」となっている、非常に珍しい一目1種の植物です。
特に

ここでは特に、食品として楽しむことができる「杜仲葉」について主にまとめました。

漢方の分類五味五性では「甘」「温」になります。(一部で、皮を「辛」と分類している文献もありますが、甘が一般的)

薬効・効能

杜仲葉

  • 葉をお茶にした杜仲茶には、血流を良くし、交感神経に働きかけ、血圧を下げる効果が最も知られています。杜仲葉配糖体(ゲニポシド酸)が血圧に効果が有るといわれていて、医学的に実験し査読を通って発表されている論文があります。その成果を元に、特定保健用食品に認定された商品も市販されています。
  • そのほか「肝腎から来る冷え」「頻尿」、さらに「ダイエット」にも効果があると言われ、体脂肪率や体重が減ったという報告も。
  • ノンカフェインで妊婦さんや幼児でも安心して飲むことができます。

杜仲(樹皮)

  • 樹皮は日本薬局方に収蔵の医薬品。そのため、医薬品としての法規制を受けるものです。(葉は食品です)
  • 古来、腰膝痛を治す。流産防止、高血圧症に効くとされる、基本的で効能の強い漢方薬です。
  • 特に女性に良いとされ、腰背痛や虚弱体質の妊婦さんに。漢方処方では陽虚の治法に分類され、特に「肝臓を補い、気血の流れを促し、腱、骨を強くする」とか「子宮と胎児を安定させ、妊娠中の出血、切迫流産、胎動不安などに効果あり流産予防」といった事が言われています。
  • 「杜仲の樹皮の抽出物を家兎に投与すると、著明な血液効果を示」す [刈米達夫, 1971]とされており、血圧を降下させる作用は古くから知られ、動物実験などで確かめられているようです。
  • 人間に対しては、中国で119人を対象にした臨床試験が行われ、46人に有意な血圧降下作用があったとされています。ただし重症な高血圧には効果が薄いと言う話も( [アンドリュー・シヴァリエ, 2000])
  • 漢方処方では陽虚の治法に分類され、特に「肝臓を補い、気血の流れを促し、腱、骨を強くする」と言われ、子宮と胎児を安定させる、妊娠中の出血、切迫流産、胎動不安などに効果あると流産予防に用いられてきました。特に腰背痛のある妊婦や虚弱体質の妊婦に適するとされています [サンディ・スワンダ, 2009], [原島広至, 2017]
  • 強壮、強制、鎮痛薬として、四肢の冷えや疲労を伴う腰痛、外傷性の腰痛、月経期の腰痛または流産防止の目的で妊娠時の下腹部痛に使用されており、またやはり高血圧症を目的として、「大防風湯」(だいぼうふうとう)や「加味四物湯」(かみしもつとう)にも配合されています。 [原島広至, 2017]
  • 長野県で生産されている著明な薬用酒、養命酒にも杜仲(樹皮)が含まれているそうです [養命酒酒造, 2019]

味や食感

葉っぱを使った杜仲茶は、穂なかな甘みを感じるお茶です。薬草茶の中では癖が少なく飲みやすいほうでしょう。
ただし、これは正しく飲用に処理した場合。上手く処理しないと、青臭かったり、逆に苦みが強く出てしまったりします。

杜仲茶の作り方・飲み方

栽培と収穫

杜仲茶にする杜仲は、葉をとるために育てたものを使います。樹皮をとるように育てたものはあまり大きな葉っぱがつかないので、葉をとるように栽培を行います。
栽培では、種は非常に発芽率が悪く、また挿し木も一般に難しいので、木が小さい時の管理が困難で、増やすのが難しい木です。
安定して葉が収穫できるようになるまで5年ほどかかりますが、一度大きくなれば非常に生命力のある木で、基本的には無農薬栽培で育てる事ができ、また樹木の寿命も非常に長く楽しむことができます。

葉は6月以降で収穫ができますが、概ね8月、台風シーズンで葉が傷ついてしまう前までに収穫するのが良いでしょう。基本的に枝ごと収穫し、天日干しで乾燥させます(陽乾)。乾燥機を使う場合、高温にしすぎると苦みが出るので、低温で。
葉の茎が手でぐにゃっと曲がらず、「ポキン」と折れる位までしっかりと乾燥させます。
ご家庭では、平たい段ボールなどを使って乾燥させて、一日に一度程度、適宜かき混ぜてください。一度乾燥させたら、網袋などに入れて、風通しの良い所で保管しましょう。

杜仲の木
杜仲の木

お茶に

これをお茶にする方法は大きく2種類あります。
また、癖が少なく、甘みのあるお茶の特徴から、ブレンドしたハーブティ、薬草茶などにも優しさを加えてくれます。

焙じて煮出して飲む(最も一般的)

乾燥させた杜仲茶を焙じます。煎りすぎは苦みが強く、煎りが足りないと青臭く薬臭さが残るので好みでバランスをとりましょう。煎り鍋や古いフライパン等を使い、臭いが強く出るのでよく換気しながら、あるいは室外でやるのもいいかもしれません。
目安は、ちょうど、杜仲の粘り成分が無くなってきて、バラバラになり始めたくらいがちょうどいいです。
これを3グラムから5グラム程度に小分けし、市販のお茶パックに入れます。市販杜仲茶はこの状態で販売されている事が多いです。
概ねお茶パック1つに付き1~2リットルの水を目安に、10分から15分ほど煮出し・煎じるのが一般的でしょう。また、ティーバックのように煮出さずに飲む事もできます。

できあがりは、茶色い透き通ったお茶に。上手くすっきりと飲みやすい、香ばしくて少し甘みを感じるお茶になります。

市販されている物の多くは癖を無くすために強めに焙じられているものが多いので、機会がある方は焙じる前の杜仲茶を手に入れて、自分好みで焙じてみてください。

杜仲茶
焙じて煮出した杜仲茶

そのまま飲む

十分に乾燥させた杜仲茶を、そのまま手で潰し急須へ。熱いお湯を注いで飲む方法です。
できあがりは、少し黄色みがかった色のお茶に。優しい、甘みが強く出る味わいを楽しめます。(ただ、少し青臭い風味があります。)

この場合は、特にきちんと乾燥させることがポイントです。

その他の利用方法

粉末にして粉末茶として飲む方法や、青汁にしたもの、普通のお茶のように蒸してお茶にしたもの(杜仲緑茶) [杜仲緑茶ながの, 2009]というものもあります。
そのほか、粉末にしたお茶を練り込んだ麺やおやき [青木村NIきたい会, 2018]なども。また若葉を天ぷらにするといった変わり種の食べ方もあります。

杜仲トリビア

杜仲と南信州

日本での本格的な杜仲の生産は、この南信州、南箕輪村から始まっています。
当初は樹皮を生産する予定でしたが、樹皮は生産に数十年かかってしまうものでした。
そこで、樹皮ではなく、葉をお茶にしようと思いついたのが、南箕輪村の唐沢武さんという方を中心とした人たち。その後、富山大学などと共同研究し、杜仲茶は誕生したのだとか。
1980年代から90年代にかけて、最盛期伊那谷では400戸を超える農家が盛んに栽培していた。現在でも県内では、箕輪町のサンメルクス等を中心に伊那谷と、青木村などで比較的大規模な販売のための生産が行われています。

という訳で、杜仲茶は中国には元々なかったものですが、今ではこの飲み方が中国にも輸出され、楽しまれているそう。

杜仲ブームと南信州

杜仲茶のブームは何回か来ているけれど、その中で最大のものは1993年9月13日、みのもんたさんの「午後は○○おもいッきりテレビ」で紹介された事によるもの。
当時のブームの様子は、当時の杜仲生産組合の記録を見ると、それはそれはすごいものだったとか。
しかし、杜仲はよい葉がとれるようになるのに数年かかります。ブームが来たからってそんなに急に増産できません。そのため、業者は国産を待ちきれず、中国から輸入してしまいました。

しかし、先に書いたように、中国には元々杜仲の葉を楽しむ文化はありません。
そのため、当時この時輸入された杜仲は、中国で漢方薬の樹皮をとるための木から無理に収穫したものでした。
国内のお茶にするために育てられた杜仲と比べ、葉の質は悪く、また焙煎や抽出も雑で、苦く薬臭く、はっきりとまずいもでした。

そんな杜仲が大量に出回り、結果、杜仲茶はまずいと言う風評が発生。触れ戻しで需要が激減、一気にブームは終わってしまいました……。

この頃をピークに国産杜仲は衰退、さらに最大手の日立造船が事業大幅縮小を決定。一気に杜仲の需要が減少し、多くの杜仲生産組合も解散してしまいます。
なお、日立造船の杜仲茶部門は、その後日立造船バイオに分離されたあと小林製薬にされ売却解散しています。

その流れから、今でも最も手に入りやすい杜仲茶は小林製薬さんの杜仲茶。ですが、全面的に中国よりの輸入しており、国内産の杜仲茶は扱っていないそうです。

そんな状況ですが、南信州では、当時杜仲を育てていた農家が自家用に残した杜仲の木を残して、今でも飲み続けられています。

杜仲の神秘「グッタペルカ」 ゴムとしての杜仲

杜仲の葉や枝、種には「グッタペルカ」と呼ばれる粘り気のある樹液があります。これは天然ゴムとしても使われてきました。
実は、杜仲が世界に広まったのは、薬よりまずこちらの「ゴム」としての特性が注目されて世界に広まっています。学名の「Eucommia」も、ゴムに由来した名前。

通常、天然ゴムの木は熱帯気候でないと育ちません。その一方で、この杜仲は、かなり寒冷地でも育つので、19世紀にイギリスのプラントハンターによって中国で「発見」され、ヨーロッパにももたらされました。
温帯や寒冷地でも育つ植物では唯一ゴム状の樹枝を出すため、樹枝源として利用するため、北海道よりも北にあるドイツでも栽培されたこともあるそうです [アンドリュー・シヴァリエ, 2000]。
日本にも、明治時代に最初に輸入されたときは薬ではなくゴムをとるために輸入されました。

現在も、ゴムの特性を強化する品種改良及び研究が行われています。日本でもNEDO補助により研究が行われ、「トチュウエラストマー」としてゴルフボールなどが既に製品化されています。 [新エネルギー・産業技術総合開発機構, 2018]ゴムは硬質で、衝撃吸収性に優れるとか。他にも、環境意識の高まりから、原産国で世界最大の生産国でもある中国で樹液を活用する研究が盛んに行われているようです。

杜仲のグッタペルカ
杜仲のグッタペルカ

最近の杜仲の研究

日本では、日本杜仲研究会という組織があり、ここが毎年定期的に講演会を開いていらっしゃいます。 [日本杜仲研究会, 2019]
長野県内では、信州大学農学部中村浩蔵准教授が、杜仲の成分の研究を行っており、賞を受賞されているなど、研究が続いています。 [信州大学農学部, 2018]

杜仲の歴史

杜仲は、一世紀頃に中国の本薬書『神農本草径』に記載されており [アンドリュー・シヴァリエ, 2000]非常に歴史が深い薬草です。
この「杜仲」の名前は人名からきていて、毎日杜仲の樹皮を砕いて飲んでいた仙人の名前が杜仲だったからことからと言う説がある [原島広至, 2017]

出展・参考文献